Ⅹ(クロス)

「なあ。」

ユウリは、遠くの海にちらつく船の灯りに目を遣りながら言う。


「ん?」

リディアがその碧色の瞳を、ユウリに向ける。


「行かなくてもいいんだぜ。」


「ぇ?」


「ラドニアも、このロトスも、所詮なるようにしかならねェんだからよ。

後は、運を天に任すってのもいいんじゃねェの?」

ユウリは煙草の煙を大きく上に向かって吐きながら言う。


「だってよ、お前、せっかく逃げてきたんだぜ。
ラドニアからよ。」


リディアは、ユウリの彫りの深い横顔をじっと見つめながら、ふっと口元を緩める。



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