Ⅹ(クロス)
錆びたスプリングの軋む音がする。

机の縁は磨り減り、黒光りしている。


(あの人は、ここで、一人でこうしてこの机に向かっていたの・・・?

毎日・・・

たった一人で・・・。

ラドニアの・・・為に・・・?)


アーリアは、机の小さな引き出しに目を留めると、躊躇いながら、その真鍮の取っ手を手前に引いた。

がらんとした引き出しの中には、数本のペンと、インク、そして、古い木枠の写真立てが伏せて入れられていた。


アーリアは、その写真立てをゆっくりと表に反す。


「ぁ・・・」


アーリアは、小さな声を上げ、その手を震わせた。

揃いの王国服に身を包み、仲良く肩を組みながら笑っている幼い二人の男の子。

それは、紛れも無く幼い頃のフェルナンドと、今は亡きアルフレッド3世だった。

アーリアは、思わず手を口に当てて嗚咽を押さえる。

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