Ⅹ(クロス)

――ブーブーブー

ジャコスはポケットの中で鈍い音を立てる無線機を取り出して、イヤホンを耳に当てる。


『・・・ジャコス・・・か?』


それは途切れ途切れに擦れた男の声を発している。


「お前、アグリか?」


『・・・うだ。 ラド・・・アの回線が切断・・れて・・・

連絡が・・・なかった。』


「アグリ、ユウリは今、クロスとシュラムにいる。」


『・・・ロスとは、リディア姫の・・・か?』


「ああ。そうだ。」


『ジャ・・ス、今ラ・・ニアでは、大変な騒ぎが・・・ている。

リディ・・・姫の織った布が、緋色・・光を発し・・いる・・。』


「光だと?」

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