Ⅹ(クロス)
ブロスはグラスを拭く手を休めると、古びた掛け時計を上目使いでちらりと見、その視線をカラスに移した。

「よう、カラス、気持ちは分かるが未成年はそろそろ家に帰ったらどうだ? 嵐も来てるみたいだしなぁ。」

カラスは慌ててカウンターに両手を着き、身を乗り出して言った。

「えぇー?! そりゃないよ!マスター。 俺、3ヶ月も待ったんだぜ!
船は着くよ。 無線に連絡も入ってないし… それに…」


バタンッ!!

いきなり、カラスの声を遮るようにドアが壁に荒っぽく打ちつけられると、全身から雨の雫を滴らせた青年が頭を突き出した。

背中にはぐっしょりと濡れた黒い大きなザックを背負っている。


「ユウリ?!」


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