Ⅹ(クロス)
「何をしに行く?!」

ケインはバックミラー越しに問い質した。


「行きゃ分かるって・・・。
安心しな。別に暴れに行くわけじゃねェよ。」


ケインはちらりとリディアの方を見た。

リディアはケインに頷いてみせる。

(まったく・・・。 困ったお姫様だ・・・。)

ケインは溜息をつきながら、そのまま車を加速した。




車は海岸通りへと抜ける。

左手には、セルシオ海が朝の光りを浴びて眩いばかりに輝いている。



「ねぇ、あなたの船はどこに停めてあるの?」

リディアは海の方に目をやりながら訊ねる。


「あぁ? こんな人目に着くところに停めておくわけねェだろ。

ルード湾の東の方だ。」


「そう・・・。 」

リディアは興味深げに湾の方を振り返る。



「クソみたいなボロ船だぜ。 」

リディアの様子を横目で見て、若者は穿き捨てるように言った。





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