Ⅹ(クロス)

老女はカラスの腕を取り、しばらくじっと目を瞑っていたが

「紫紺の塊(カイ)よの。」

独り言のように呟いて、背負っていた小さな白い袋の中から二つの小瓶を取り出した。

その青紫色と群青色の液体は、瓶の中で踊るように揺れている。

老女は、その液体を少量ずつ手のひらに取ると、もう片方の手で蓋をする。

老女がグッとその手に力を込めると、全身の気がその手の中に集中し、老女の手は真っ赤な光を放った。


「さて。どうかな。」

老女はそっとその手の蓋を開ける。

そこには、濃い紫色のぬるりとした塊が、揺らめいていた。

老女はそれをひょいと摘み上げると、カラスの口にするりと滑り込ませる。





「・・・ぅ! ゴホッ ゴホッ ゴホッ!!」

カラスの口から、黒い煙の塊がいくつも吐き出される。


< 302 / 401 >

この作品をシェア

pagetop