Ⅹ(クロス)
前方に白い灯台が見えてくると、車は右側に進路を変え、St.マーガレット養護施設のある高台に向かって緩い坂道を登り始める。

国有地として確保されたその一角は、そこだけが切り取られたような形で木々や草花が昔のままの姿で残っている。

急速に街がその姿を変えるラドニアに置いて、そこに存在する自然は、あたかも人工的に造られたかのような錯覚さえ感じさせる。


「皮肉なものだな。 王室自ら自然を叩き潰しているくせに、自分の庭には自然がいっぱいだ・・・」

若者は窓の外を眺めながら呟く。


「だが、そのお陰で人々は何不自由なく暮らしている。」

すかさずケインが言う。


「そうでもないさ。 

現にこれから行く所にいるのは、必ずしも遺児だけじゃない。」

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