Ⅹ(クロス)

「ここが、シュラムの村か・・・」


そこは、村というより小さな集落と言ったほうがいいような所だった。

一面の緑の草の上にぽつりぽつりと建つ、円錐形に尖った屋根の小さな家々。

濃い紫色の瓦を重ねたようなその屋根の周りには、小さな釣鐘型の鈴が沢山吊るされていて、

風が吹く度、シャラシャラと涼しげな音を立てている。

どこからか漂う、麝香の香・・・

――ックション!!

カラスは思わず鼻をごしごしと擦った。


――バタンッ


突然、手前の方に建っている高い見張り小屋のような建物のドアが開き、中から一人の女が飛び出して来た。

「ナフサ様、お怪我はございませんでしたか?

急にお姿が見えなくなったので、皆で心配しておりました。」


「おお、サラか。 心配をかけたの。

光の柱が立ったでな、もしやと思って出かけてみたのじゃ。」

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