Ⅹ(クロス)

その脳裏には、ラドニアの動力炉の中で見たジプサムの姿が鮮明に甦る。

灰色に濁り、黒い霧のようなモノが渦巻いていたジプサム。

立ち込める異臭、そして耳に響く轟音・・・


「覚えがあるようじゃな。

その産物とは・・・人の心を破滅へと導く、渇望の闇。

それに触れた者は、欲望に駆られ、焦り、惑い、追い詰められ、ついには、その体をも侵されてしまうのじゃ。」


リディアはハッとして、ナフサを見る。


「では、叔父様も・・・!?」


「そうじゃな。
それに触れたばかりに、自分を失ってしもうた。」


「そんな・・・。」


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