Ⅹ(クロス)
Ⅱ. カラスの秘策
村は、まだ朝靄に包まれていた。
紫の屋根の家々は、その中にひっそりと佇んでいる。
どこかで山鳥が小さく鳴く・・・
地平線に近い東の空は、少しずつ薄桃色に染まり始めていた。
「行くのじゃな。」
ナフサは蔦の壁の前に立つ三人に声を掛ける。
「はい。
色々、お世話になりました。」
リディアは深々と頭を下げる。
ナフサは大きく頷いた後、
「ほれ、カラスとやら、大事な物を忘れておるよ。」
小さな麻袋をカラスに手渡した。
「あ、そうだ。」
カラスは懐を弄って始めて気付く。
「お前が命がけで採ってきたのじゃろ。」
ナフサは目を細める。