Ⅹ(クロス)
Ⅳ. ラドニアへ飛べ
ロトス島の最北端、セルシオ海を眼下に見下ろすチドリー岬。
その中央部に、銀色の鳥は翼を広げて停まっていた。
まだ明けきらない朝の光が、その硬質な機体を白く輝かせている。
海からの風は、びゅうびゅうと音を立てながら、その機体の脇腹を吹き抜けていった。
リディアはその後部座席から、海の彼方に小さく浮かぶ黒い影を見る。
ラドニアへ飛ぶ・・・。
不思議に、恐怖は無い。
これから起こりうる事に対して、不安が無いといえば嘘になる。
けれど何故か、あのシュラムでナフサの話を聞いてからは、心が騒がなくなった。
リディアはゆっくりと目を閉じる。