Ⅹ(クロス)
「どういうことなの?」
リディアは眉を寄せる。
「気持ちが追い立てられている。
皆そうなのだ。
富める者も貧しい者も、前に進まなければ、まるで死んでしまうかのように一様に追い立てられているのだ。」
「何に?」
「それは分からない。
けれど、この街の自然を潰して何かが出来る度、それは酷くなっていく気がする・・・。」
「叔父様、では子供達は?
大人達が働くことしか考えなくなってしまったら、子供達はいったいどうなるの?
誰が子供達に、生活の喜びや楽しさを教えるの?」
「リディア・・・
此処は、緑に囲まれた王室の中とは違うのだよ。」
「どうして? どうして叔父様までそんな事をおっしゃるの?!」
リディアの問いかけにカプリは答える事なく、鳴り響く電話のもとへ向かった。
ケインがリディアの肩にそっと手を置く。
リディアは小さく頷くと、そっと席を立ち、カプリに目で合図を送ると、ケインとともに、その場を後にした。
リディアの脳裏に養護施設で出会った少女や、落ち窪んだ目をした少年の顔が浮かぶ。