Ⅹ(クロス)
「養護施設に着いて、シスターとお話をしているうちに、お腹がとても痛くなってきたの。

まるで、何かに抉られるかのような痛さだったわ。

私は、耐えられなくなってその場に倒れこんでしまった・・・。

私の足元には、夥しい血が流れていたわ。」


「そん・・・な・・・。」



「そして・・・気が付いた時には、私は病院のベッドに寝かされていた。

お腹の痛みは、別の痛さに変わっていたわ。

そして、私は気が付いたの。

お腹の中の命が消えている事に・・・。」


「・・・ぇ?」


「お医者様はおっしゃったわ。

もともと、育たない命だったと。

取り出した時には、すでにこと絶えていた・・・と。

私は、半狂乱になって自分を責めたわ。

大声を出して、取り乱してしまった・・・。

その時だったわ。

病室のドアが静かに開いたの。







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