Ⅹ(クロス)
そこには、一人の女性が立っていたわ。

黒い服を着て、手には大事そうに白い布で包まれた何かを抱えていた。

彼女はとても苦しそうな息をして、今にも倒れそうだった。

彼女は碧色の美しい目を真っ直ぐに私に向けて言ったわ。

『お願いです。 

どうか、この子を育ててください。

私は、もうすぐこの世を去ります。

この子は、ジプサムの申し子。

ここへはジプサムに導かれて参りました。

お願いです。

どうか・・・この子を・・・』



彼女は私の枕元に抱えていた赤ん坊をそっと置くと、崩れるようにその場に倒れたわ。

傍にいらした先生は、慌てて彼女を診ていらしたけれど・・・その時はもう遅かった。

そして・・・後には、赤ん坊だけが残されたの。」



「その赤ん坊が・・・私・・・なの・・・?」

リディアは震える声で訊ねた。




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