学園皇子はメガネ少女に夢中
「素敵…」
「良かった…」
「え?」
と私が呟くと三神さんは
準備室の扉を閉めて飾られている
ドレスに近寄る
赤い生地に桜の柄が施されたドレスはとても斬新だった
正に和のドレスだ
「頑張って作って良かった…副会長、着てくれますよね?」
三神さんは少し潤んだ瞳で私を見つめた
「三神さんが着ないのですか?」
私の問いかけに頷いた三神さんはポツリと呟く
「私は好きな人一緒に歩けないから…それに会長と副会長みたいに美男美女じゃないし」
私のどこに美があったのだろうか
強いて言うなれば私の大切なメガネだけはこまめに磨いている
「皇子はともかく私は美しくないですよ。その好きな方は恋人が居るのですか?」
「…恋人でしょう…演劇が…」
「それって喜優先輩のこと?」
コイツは…!!
デリカシーやプライベートというものをどこに捨てて来たんだ!!
乙女の心に…
「薫風、顔が酷いよ」
こ、コノヤロー!!
「会長、部長と知り合いですか?」
三神さんが私に椅子を引いてくれた
「もちろん演劇部の脚本家としてとても有名だ。薫風も知ってるだろ」
「えぇ。まぁ…」
和宮喜優演劇部部長、
わみやきゆう
そして、脚本家だ
「今、高校生活最後の脚本だって言って文化祭の劇の話も作ってくれてるんです…」
嬉しそうに、でもそれ以上に切なそうな微笑みを浮かべながら三神さんは話してくれた
和宮先輩は裏方が好きらしく、目立つ事が嫌い
脚本家も目立ちそうなんだが…
「だから無理なんですアタシなんか…」
「一度でも、誘ったの?」
その言葉に三神さんは静かに首を横に振った。