中毒な彼
「・・・・うん。大丈夫・・・ちょっと驚いただけ。」

でたらめだと分かっていても、信じてしまいそうだったから。

理由は、体育の時間で足を怪我して授業途中に保健室へ行った時、私のことを好きだと噂されていた子が保健室の中で顔に包帯を巻かれていた。

「どうたん?・・・大丈夫?」

その子の後ろ姿に思わず声をかけた。

私の声に気づき、その子が振り返った。

真っ正面からその子を見た瞬間、私は思わず目をつぶってしまった。

その姿は、あまりに衝撃的で言葉にならなかった。

「・・・・まだ痛いけど大丈夫やで。」

その子は、少し笑ったように喋った。

「・・・・誰がそんなことしたん?」

床に視線を向けたまま呟いた。

「・・・・誰やったっけ?気づいたら屋上にいてこんな怪我してた。」

「・・・・・えっ?」

思わず顔を上げた。

「・・・本間に覚えてないん?」

「覚えてない。」

しばらくの沈黙が続く。

「誰がこんな酷いことを・・・・」

「・・・誰かは分からんけど見た目より酷ないから大丈夫やで。」

「本間に?」

「本間に。」

「ちょっと鼻の骨折って、瞼がえらい腫れてて目が見えにくいだけで後は全体的に腫れてるだけや。すぐ治る。」

その子は、笑っていた。

私は、その笑顔でさえ痛々しく感じた。

その日の放課後、大和と帰っていたら大和の右手に湿布が貼られていることに気がついた。

「・・・・どうしたん?何で湿布貼ってんの?」

聞いた時は、キョトンとしていた大和の顔があぁ〜と思い出したような顔に変わった。

「何か体育の時間に打った。」

「ふぅ〜ん。んで、大丈夫なん?」

「おぅ。授業の後、友達に言われて初めて気づいたからあんま痛くない。」

「そっか〜。それはよかった。」

怪我の話しは、それで終わり家に帰宅した。

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