中毒な彼
「さっきの件って?」

窪田君の姿を見ていた私は、その低い唸るような声に思わず体が固まる。

「えっと・・・大和には関係ないことやし気にせんといて。」

「嘘やな。窪田が俺に関するデマでも喋ったんやろう?」

「・・・・・。」

「図星?」

「・・・・じゃあ、聞くけど・・・大和は人を殴ったことある?」

1番聞きたかったことやけど、1番聞きたくもない答え。

もし・・・“うん”って言われたら・・・・

大和が答えるまでの時間がとても長く感じた。

「・・・いや。人を殴ったことなんか一度もない。」

「本間?」

「本間。」

「ってか、何でそんなこと聞くねん?」

「えっと・・・」

窪田君から聞かされた話しを全部話した。

「はぁ〜、つまり俺がお前を好きやから、そいつをボッコボッコにしたってか?んなん、無茶苦茶 な話やんけ。ってか、お前がこんな話を信じたのがショック・・・」

大和は大きくため息をついた。

「・・・いや・・・別に信じてたわけじゃないねんけど、当時の状況とぴったりやって・・・」

「だからって、俺を容疑者扱いするな。」

「・・・ごめん。」

「まぁ、ええわ。それで、取りに行ったんか?」

「・・・・えっ?」

最初、何を言っているのか分からなかったがだんだんと本来の趣旨を思い出した。

「あぁーまだや・・・どうしよう・・・もう教室閉まってるかな?・・・」

「はぁ〜、お前はアホか。趣旨忘れてどないすんねん。この時間ならまだ教室空いてるからさっさと取ってこい。」

ため息まじりに大和が言った。

「分かった・・・でも、大和も忘れもん取りに来たんちゃうん?」

「あぁ〜俺の忘れもんは、今日持って帰らなあかんものちゃうし別にええねん。」

「あ〜、そうなんや。じゃあ、取ってくるわ。」

教室に向かってる間、“今日、持って帰らんでもいいものなら何で学校来たんやろう・・・?”と言う疑問を持ちながら、教室に着いた。

教室にはブラスバンド部に所属する子達が、何やらこそこそと話していた。

何を話しているのか分からなかったから、さっさと机に向かい忘れ物を取って教室から出ようと思った時。

「操ちゃん!」

と呼び止められた。
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