中毒な彼
「忘れ物は取ったんか?」

「あ・・・うん。」

「ほんなら、さっさと帰るぞ。」

大和はそう言うと下駄箱に向かって歩きだした。

「あの!」

歩く大和はその声に気づき振り返る。

「なに?天野。」

「あの・・・・大和君の好きな子いるん?」

「いる。」

「それって操ちゃん?」

静香ちゃんは泣きそうになりながら言った。

「それは・・・・。」

大和が言いはじめたと同時に

「キーンコーン」

完全下校を知らせる5分前のチャイムが鳴った。

そのチャイムと同時にブラスバンド部の子達が教室から喋りながら出てきた。

「あっ!大和君!何でこんなとこにいるん?忘れ物?」

ブラスバンド部の子達の一人が大和に話かけた。

「あ〜・・・・」

返答に困っている大和は私と静香ちゃんを交互に見て

「うん。」

と答えた。

「ふぅ〜ん。じゃあ、操ちゃんと静香は何でいるん?」

「あっ、それは・・・・」

もう一人のブラスバンド部の子が気まずそうに私と静香ちゃんを見る。

「あぁ〜そうゆうことね!」

その視線に気づいたのか、何やら納得した様子でその子が頷く。

「操、早よ帰るぞ。」

こうゆう雰囲気が苦手な大和は嫌そうな顔をしていた。

私は、さっき大和が何を言おうとしたのか気になったが、この場の雰囲気を考え大和の所へ歩きだした。

「大和君・・・やっぱり操ちゃんが好きなん?」

後ろから静香ちゃんの呟くような声が聞こえた。

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