ココア
「七海、俺さあ。
思うんだけど・・・・」
レッスン終了後、
最近、クラス替えで
同じクラスになった
啓太が、ボソッと
小声でつぶやく。
先生の都合で、半年だけ
本来のレッスン曜日と違う
この曜日に、ここへ来ている。
なんか曜日も時間も今までと
違うから、習いに来てる人の
年齢層も雰囲気も違う。
だからなのか、啓太も
いつもと違った話し方を
するみたい。
「なに?どーしたの?」
啓太と顔を合わすのは
まだ7〜8回目だけど、
同じ歳だってのもあるし、
しかも、ギター大好きでしょ
あたしたちは、
意気投合するのも早かったの。
「あれ?まだ気づかないの?」
「だから、なにが?」
言いにくそうにしてる割に
人の悪い笑みを浮かべる啓太に
眉間にシワが寄る。
七海、こういう
トンチみたいな類は
ヤなんですけどっ
一秒たりとも
啓太の言わんとすることなんて
考えようともせず、
「お疲れ様ぁ」
開いた扉と声の方向を見た。
「あーっ堂野先生だあっ」
部屋から出てくる
生徒さんたちなんて
眼中に入らず
思わず七海が、
アイドル級のイケメンに
歓声をあげれば
先生も気づいてくれて
缶コーヒーを買うついでに
こっちにやってくる。