ココア
そんな、実父の奥さんから
うちの母に電話がかかって
来たのは、妹の出生届の
提出期日が迫っての
時だった。
受話器を片手にした
母の派手なリアクションを
微妙な気持ちで眺めながら
兄貴は、こうなる事は
予測の範囲だったと呟く。
“お前の時も揉めたんだ。
あの親父だぞ。あっちも
相当型破りだからな。
変なところ拘るし。
あの2人が結婚しようと
思った理由が、俺には
全く理解でない。”
“揉めたって、何について?”
部活動終わりの俺が
悠長にアイスクリームを
パクパク頬張りながら
尋ねれば
“…ああ。名前だよ。
な・ま・え。俺と
お前にも入ってるだろ。
アノ一文字が。”
溜息まじりに兄貴は言って、
俺は、心当たりありまくりの
事実に思い当たり、苦笑した。
『心配しないで。私が
あなたとエンジェルを
助けてあげる。
あとで会いましょう。』
そう言って、母親は
電話を切るなり、
こちらを一瞥して
言い放った。
『あんた達、出かけるわよ!!
恋汰!あんたは運転手!
恋次!あんたも来なさい。
あんたには、重要任務を
授けるわ!!』
…俺たちの
反抗期も思春期も
モノともしなかった
母親だけある。
命令は、絶対だった。