ココア
『2人とも巻き込んで
ごめんなさい。』
“テレサさん”からは
大凡聞いた記憶のない
謝罪の言葉に、兄貴と2人
返答に困る。
『…でも、ほら、
カノジョは凄いよね。
うちの母親の声にも
目覚めないで寝てんだから。』
何とか、空気を変える為
言葉を紡げば
『ホントだ。大物だね。』
『あらあら、ホントね。』
兄貴と共に、同意を述べ
漸く笑顔を見せてくれた。
『あのぉ…妹の名前って…』
“何にするつもりなの?”
…とは、聞けなかった。
俺に意見を述べる
権利はない。
それに…“恋”なんてつく
名前にしたくないって
言われたら、ホントは
俺たちと関係持ちたく
ないのかな?って思って
しまうし…
言い淀んだ俺の代わりに
兄貴が口を開いた。
『それだ。どんな名前の
候補があったんですか?
女の子なんだから、可愛い
名前、つけそうじゃない?
あのオヤジならさ?』
『…それが…“れんこ”“れんみ”
“エレン”など…ちょっと
共感できないモノばかりで…
主人も何かが違うと粘ってて。
それが、ついさっき
“これだ!!”って。
“レンレン”と届出書に
書いて走って行ったのよ。』
“レンレン”
…おいおい、嘘だろう。
通称ならともかく、
そんなパンダみたいな名前…
兄貴も同じ事を
考えたのかのだろう。
『…それは、いけない。
俺たちの妹が…これでは
パンダになってしまう。
取り敢えず、急ごう。』
『ええ。余程、浮かれて
いたのでしょう。
走って行きましたから
車ならきっと間に合います。』
すっかり落ち着きを
取り戻した、妹の母親が
印鑑を握りしめて言った。