ココア
市役所の駐車場に
入って直ぐに実父の
姿を見つけた。
『兄貴!居た!アレ!!』
『ああ。ホント浮かれてるな。
余程、ツボったんだな。
恋次、親父の手にあるのが
申請書だ。アレを窓口の
担当者に渡らない様に
するんだ!!』
兄貴の号令に
反射的に走り出す。
足には自信があるんだ。
おかしなドーパミンを
放出した、おかしな
テンションのオッサンに
負ける気はない。
『オッサン!!待てよ!!』
必死に間を詰める。
おいおい、予想外に
すばしっこいな。
『おお、恋次、どうした!?
こんな所で会うとは、
子供でもできたか!!』
『はぁ!?バッカじゃない!?
アンタの緩い性癖と
一緒にすんな!!』
それが高校生に
なりたての元息子に
いうセリフか!!
併走しながら、
大事に抱えている
クリアファイルに
手を伸ばす。
道中、何も落として
ねぇーだろうな!!
さっさと渡せよ!!
ガッチリ持ってんな、おい。
取れねえよ。
こうなりゃ、窓口で
係のヒトに手渡す一瞬が
勝負だな。
妹の名前は、俺が守る!