ココア



『これ、頼みます!!』

親父が表彰状の授与かと
思うほど、腰をおり
書類を突き出し、
それを、役所のお姉さんが、
苦笑混じりに受け取ろうと
手を伸ばす。

『すいません。
訂正があります。』

そう言って、お姉さんに
渡る寸前ファイルごと
奪い取り、Pタイルに床の上
妹の母親と並ぶ兄貴に向け
クリアファイルを滑らせた。

『はぁ?!どこに間違いが
あるっていうんだ?!』

親父は、そうマジ切れするが
妹がパンダ等ありえない。

…でも…
なんでだろう…?

おかしさ満載なのに
全力で異議をぶつけられると
人間、 …ひるむ。


思わず言葉をのんだ所へ
ファイルを抱えた
妹の母親と兄貴がやってきて、
親父をひとにらみした。

『恋次、ソイツを抑えてろ!』

『あなた、思いつきで
行動するのも、いい加減に
してください。
すいません。一字修正します。』

親父に小言と、窓口の
お姉さんに用件を告げ
妹の母親は、届出書の
文字を修正する。

『これで、お願いします。』

そう言って、晴れやかな
表情をした妹の母親と
消された文字をみた
窓口のお姉さんは、事態を
察知したのだろう。

『はい。確かに受理しました。』

早口でそう言って
手早く親父の手が届かない様
書類を持って行った。



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