ココア
当然、レンは名刺に
俺を連想させる本名を
使う事を嫌った。
俺とレン、当時の人事部長、
当時と現在の営業部長…奴も
当時は、もう少し痩せて
いたんだがな(笑)
顔を付き合わせて、対策を
練った結果が、『音村 蓮』と
いう中性的な表記を使う事
だった。ビジネスネームを
採用している企業だって
最近では珍しく無い。
そうやって、社会人生活を
スタートした、レンを
ずっと見守って来た。
初級管理職になってからは
無いだろうが、男社会の
不条理な立場や思いに
社屋の屋上の片隅で、グスグス
やっていた事も知ってる。
よく頑張ってきたと思う。
今、祝詞をBGMに
綿帽子のレンと、袴姿の柏木が
三々九度なんてしてるけど…
レンを泣かすような事を
ほんのチョットでもしてみろ。
テメェ、ぶっ殺すからな!!
「恋次、顔、般若みたいだぞ。」
隣で恋汰が苦笑する。
「新郎もその弟も
レンの部下なんだろ?
恥かかせてやるなよ。」
…わかってるよ。
気をつけるよ。
ああ、青空に
白無垢が映える。
お前は本当に晴れ女だなぁ。
レン、結婚、おめでとう。
もっともっと、幸せになれよ。