追いかけて~恋の行方
「気になるなら、直接柏木に聞いてみろよ」

「必要ねぇよ。俺のことは構うな。それよりお前の指輪だろ」

「話そらすなよ」

「そらしてねぇよ」

高田敦。
信頼できる有能なミッドフィルダー。

こいつがいるから、俺は伸び伸びとプレーできる。
ここぞという場面では、必ずと言っていいほど、こいつからボールが回ってくる。
何故そこまで俺を立てる、というくらいに。
自分が自らゴールを狙える場面でも、必ず一呼吸置く様に、俺にボールを回してくる奴。

それが高田敦。

あいつが俺を心底信頼してくれているのがわかるから、
だから、俺も公私共にこいつを信頼している。
どんな毒舌もお節介も、俺のために繰り出されたものだと信じられるから。

だがな、こと、自分のこととなると構われるのを嫌がる。
本当の自分に踏み込まれるのを恐れているのか、ポーズなのか。

だがな、敦、俺だって馬鹿じゃねぇ。
見かけの派手さにみんな惑わされるが、俺にはわかってる。
お前は人を立てる優しい奴だってこと。
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