追いかけて~恋の行方
「ここだよ」

案内された店は、こじんまりとした小さな店で、ショーウインドウには沢山の種類のペアリングが並んでいた。

「このお店は若者向けだから、デザインも可愛いし、どれも値段がお手ごろなんだ」

「そっか」

俺は少し安堵して、ガラスの扉を押し開る渚の後に付いて、こわごわ店の中に入る。

だいたい俺には、デザインなんてどれも同じに見えるし、指輪の相場ってものがわからない。

くるりと狭い店内を見回して、

「選べよ、お前に任せる」

俺は腕を組んだまま、じっと指輪を選ぶ渚の様子を眺める。

そうしていると、

「彼氏さん、良かったらこっちで座って待ってたら?」

店員らしい、綺麗な女性に声をかけられた。

「はぁ、すいません」

俺はなんか一気に緊張が解けて、

レジの前に置かれた、小さな木の丸椅子に、ぐったりと腰を降ろした。

「男の子は指輪なんて興味ないもんね。お付き合いでしょ?」

「はぁ、まぁ」

「こんなキラキラしたお店、恥ずかしいわよね」

と、すっかり俺の心を見透かされ、なんか気持ちが楽になった。
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