追いかけて~恋の行方
「シノブ、ありがと。散財させちゃったよね」

店を後にして、ケーキが食いたいと、渚と入ったカフェ。

ふんぞり返ってコーヒーを啜る俺をクスッと笑って眺めながら、渚がそんなことをほざきやがる。

「いいって、三年分のお返しだ。それに、半分は自分のだし」

って、別に俺は欲しくもないんだけどよ。

不貞腐れた言葉尻に、渚も薄々感ずいてはいるんだろうけど。

「わかってるよ、シノブが指輪なんて興味ないの。きっと高田くんにでも言われたんでしょ、あたしが喜ぶって」

「あ?」

なんだそれ、何故ここで敦が出てくんだよ。

「あたしは、それでもやっぱり嬉しいよ。シノブが柄にもないことに付き合ってくれてさ」

ケーキを突きながら、穏やかにそう言う渚を見て、なんか複雑な心境になる。

俺って、ほんとにこいつのことわかってんのか?

渚が俺をわかってる、その半分も、俺は渚をわかっていないんじゃないか?

そんな不安な気持ちが俺を支配した。
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