追いかけて~恋の行方
俺はいてもたってもいられなくなって、いつの間にか走ってた。

走って逃げる、麗の背中を追いかけて……

なに逃げてんだよ……

俺の気持ちは、どんどん焦りを増すばかり。

やっと着いた大橋のたもと。

大橋を横目に、土手を見渡す。

と、そこに小さくうずくまる、白い塊を見つけた。

「レイ」

俺は大声で、その塊に向かって声をかけた。

小さな塊がふわりと揺れて、のっそりと頭が持ち上がる。

その下から覗くのは、目を真っ赤に泣き腫らした麗。

お前、何泣いてんだよ。

泣きたいのはこっちだつぅの。

「レイ」

と、もう一度呼んで近づくと、ビクッと身体を強張らせ、怯えた猫みてぇな目をして俺を見る。

もう少しで手を伸ばせば触れられる距離まで近づいた時、突然立ち上がった麗は、今度は土手を駆け下り逃げようとする。

俺は逃がさんとばかりに、必死に麗の腕を掴み、それを阻止した。

「おい、なんで逃げんだよ」

そう言って睨む俺から、必死に目をそらそうとする麗。

「だ、だって、アックン怖い……大人の男の人みたいだもん」

「はぁ?」

俺はその答えに一気に脱力し、麗を掴んだ手を緩め、

「なに言ってんだよ……」

もう、泣く寸前ってくらいか細い声で呟いた。

麗もこれ以上逃げる気力を無くしたらしい。

俺と同じように身体中の力を抜いて、その場に崩れ落ちた。
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