追いかけて~恋の行方
「アックン?」

さっきより近くに、麗の声を感じて、俺は静かに目を開けた。

「アックン、ごめんね」

俺の直ぐ横まで近づいてきた麗が、俺の顔を覗き込んでそう呟いた。

「それは、なんに対してのゴメン?」

「アックンが怖いだなんて、思ってごめんなさい」

だってサングラスなんてして、大人の男の人みたいだったんだもん……と、今度は麗が拗ねて口をつぼめる。

俺はもう我慢できなくて、その突き出された唇目がけて、チュっと軽く自分の唇を重ねた。

「アックン、やだ、なんでここでキスするかなぁ」

麗は涙をごしごしと手の平で拭うと、俺をペチペチと片手で叩いた。

「だって、レイがあんまり可愛いから」

抵抗もせずに、しばらくそのまま叩かれていると、

「ごめんね、アックン、全然怖くないのに」

麗がもう一度謝って、俺に抱きついてきた。

「なに? どうした、麗?」

「ちょっと、ムギュ~ってして欲しい」

「えっ?」

「アックンに近づくおまじない」

お前、それ反則だろ?

俺の気弱で不安な気持ちを、一瞬にして溶かす麗。

フワフワ柔らかい、マシュマロみたいな麗を、俺はそっと抱きしめた。
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