追いかけて~恋の行方
『Pledge』を出たあと、城西女子達へのプレゼントに名前のカードを付けるため、ドーナッツ店に入って小一時間。

見上げた時計は八時近かった。

カードに名前を書くのは、男の字じゃなきゃ不味いって、麗が言い張るから仕方なく。

まぁ、確かに、麗に書かせる訳にもいかんしな。

「結構遅くなっちまったな。お前、一本家に電話いれとけ」

「うん」

と素直に頷いて、麗が携帯を開く。

「あ、ママ? うん。うん。わかった。大丈夫、アックンに送ってもらうから」

短いやり取りで会話を終えた麗。

「大丈夫だった?」

「え、あ、うん。ママはそういうとこ理解あるから。でも、もうご飯の用意出来てるから早く帰ってきなさいって」

「あ~、そういえば、俺、さっき、お前のお袋さんに会ったわ」

「ほんと?」

「あ~、お前んち行ったから」

「いつ?」

「いつって、お前が待ち合わせに来ないから、家に隠れてんのかと思ってさ」

「やだぁ~アックンたら、ストーカーみたい」

無邪気に笑う麗には、微塵も涙の跡は見えなくて、

「お前のせいだろ、この馬鹿が」

と、俺は麗の頭をコツンと叩いた。
< 156 / 171 >

この作品をシェア

pagetop