追いかけて~恋の行方
俺は重い気持ちで、渚の家の前で立ち止まった。

『ピン~ポン~』

渚んちのインターフォンを押す。

あいつんちは俺んちと違って、だいたいお袋がいる。

『どちらさまですか?』

『あっ、シノブです。ナギサいますか?』

『なんだ、シノブくん。ちょっとまって……(ナギサぁ~シノブくんよぉ~)』

暫くたって、玄関の扉が開いた。

出てきたのは、渚のお袋、湊(ミナト)さんだ。

「お待たせして、ごめんなさいね。
ナギサってば、具合が悪いとかで下りてこないのよ。
今日試合だったんでしょ。
もしかして、なにかあった? 喧嘩とか?」

「いえ、試合は勝ちました。
ただ、折角応援来てもらったのに、打ち上げあって、ナギサを送ってやれなかったから…」

俺は直立不動の体制のまま、真っ直ぐと湊さんを見つめて答えた。

『俺にやましいことは一切ない!』

そんな思いだけが、俺の中を駆け巡る。

「やだ、ナギサったら、そんなことでムクレテるのかしら…ごめんなさいね」

「いえ、俺が悪いんで……ナギサに誤っておいてください。じゃ……」

俺は一礼して、家に戻った。
< 75 / 171 >

この作品をシェア

pagetop