My fair Lady~マイフェアレディ~
囁くような歌声はこの雪景色に溶け込むようで、俺の胸にすんなり入って来た。
心地よく目がとろんとしてくるのがわかる。瞼が重い。

俺は撫でられるままに頭の力を失い、彼のフワフワのマフラーに顔を埋めた。

彼の体温を感じた。そして彼のいやに清潔感のある匂いも。
父親のような汗臭さはない。今はこんなに寒いのだから汗臭いわけがないが、そういう事ではなく、なんとなく人の匂いではないような気がした。


『Build it up with wood and clay,
Wood and clay, wood and clay,
Build it up with wood and clay,
My fair Lady.』



彼の歌は続いた。俺が眠りに落ちても。俺の寝息をバックにして。
美しい声は響いた。この雪景色を背景にして。



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