My fair Lady~マイフェアレディ~
頭上から声が聞こえた。顔を上げれば綺麗な男の顔があった。

(ああ、そうか。俺はこの人に連れてこられたんだった)

頭は段々はっきりしてきていた。彼はしゃがんで俺の顔を覗き込むようにして頬を撫でた。

「俺の名前を覚えているか?」

「ロード」

俺はすぐに応えた。すると彼は初めて会った時のようにニッと笑った。


「ロード、パパンは?」


なんだか居心地が悪くなった俺はすぐにパパンの事を口にした。すると目の前の男から一瞬表情が消えた。だが、すぐにまた笑った。

「いない。今日から俺がお前のパパンだぞ」

「……なんで?…なんでパパンはいないの……どうして…?」

初めは理解ができなくて、すぐに疑問が過ぎり、そして悲しくなった。

もう会えないのかと、もうあの顔やあの大好きなゴツゴツした手も、少し汗臭くて男らしい身体で抱き上げられる事がないのかと。酷く、悲しくなった。

「パパン…パパン…っ」

俺は流れる涙が止まらなかった。止めようとも思わなかった。溢れる水滴を手でなんどもなんども拭った。鼻水もズルズルとでてきそうなのを啜って押し込めて。喉がひくひくと鳴った。

目の前の男はそんな俺をジッと見た後、すぐに俺の両手を取り、顔を上げさせた。
視線が合うと彼はハキハキとした、何の迷いの無い言葉を吐いた。

「お前のパパンは俺だ。前の男とはもう二度と会う事はないだろう。何故なら、あの男はもうお前のパパンじゃないからだ。」
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