My fair Lady~マイフェアレディ~

「………」


彼は無言だった。


ネオードのように俺を観察しているのだろうか。
嫌だった。あんな風に見られるのが。ぎゅうっと音がするくらいに彼にしがみ付く。
スルリと背中と腰に手が回された。


空気が重い。


どっしりとした威圧感を感じる。
それを感じ取ったのかカイトが首を傾げている。俺は場の空気をどうにかしなくてはと思った。


笑ってよ!いつもみたく!!


彼に怒りの様な感情を心の中でぶつける。しかし、そんなものが届く筈がなくて、俺は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

「どうしたんだよ?ユウ」

カイトが困ったような、呆れたような声を出した。
どうやら深呼吸の吐く息が妙にでかかったらしく、深い溜息に聞こえたようだ。

「なんでも…ない」

チラリとカイトを見ると「甘えっこ~!」と小さな声で俺にだけに聞こえるように言ってきた。俺はそれにムッとしてプイッとそっぽを向いた。

そしたら彼とバチッと目が合ってしまった。
カイトのおかげでなんとか普通にできそうだ。

「ねぇ、ねぇ、パパン」

「……なんだ」

たっぷり時間を置いて彼はやっと声を発した。

「お家帰ったらスープ作って。お願い」

彼の胸に顔を寄せて上目遣いで見上げる。
彼は一瞬呆気に取られたような顔をした。


そして直ぐに笑った。


「いいぞ」



何か違和感のある笑いで。

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