My fair Lady~マイフェアレディ~
優しさに騙されていた。
ずっと、ずっと、騙されていたんだ。



俺は彼の歌に酔ったように頭が働かなくなった。

気付いたら家の前だった。
車から降りて、彼は車を裏へ回す。
開けようとした扉が勢いよく先に開いた。


ネオードが俺を見下ろしていた。

「ネオ?」

彼があんまり慌てた様子だったので俺は純粋に驚いて目をパチクリさせた。小首を傾げているとネオードは俺をギュッと抱きしめた。

「無事か…」


ホッとしたように溜息をつくネオードに俺は寒気がした。

(気持ち悪いっ!!)

だが、俺はネオードを押しのける事をしなかった。
そんな事をしても事態は悪くなるだけだ。

だが、心でギッと睨む。


(彼と一緒に俺を騙していた癖に…!!)


こんな…心配する振りなんて…!!


酷く、心が痛かった。

あんまりだ…あんまりだよ…!!


「苦しい…」


呟いた一言にネオードが離れてくれた。

ネオードと目が合って、俺の心臓は跳ねた。
不安そうに瞳が揺れて、苦しそうに眉は顰められていた。


俺の唇が震える。

それは、本当に…。


わからない。

俺は困惑するしかなかった。



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