My fair Lady~マイフェアレディ~
これが、きっかけで俺は彼に対する壁は数段に低くなった。
ただ、どうしても彼を『パパン』に思えないのはどうしたものか…いや、理由はもちろん前のパパンが本当のパパンだからというのもあるが、何より、この男は若いのだ。
どれくらいかわからないけど、でもまぁ20代後半かな?って感じだ。

彼は泣き止んだ俺を抱き上げると周りをグルリと俺に見せた。

「ここは、地下なんだ。」

「地下?」

「そうだ。寝室は地下に作ってある。」

「どうして?」

「寝ている時が一番無防備だからさ」


俺は疑問に思うもそれ以上追及しなかった。

彼はカツカツと高い音を響かせて奥の扉に向った。銀色の金庫みたいな重たそうな扉だ。そのレバーを下にガコンッと引いてそのまま引っ張る。すると、そこにはノブも何もない木の壁があった。彼はそれを足で軽く二、三回蹴った。

するとそこが少し後ろに下がった。下がった分亀裂が入った所を手にかけて彼はその木のドアを開けた。

細く、クルクル回った階段が現れる。そこを登っていけば、キッチンに出た。
キッチンは狭くも広くも無い。普通な空間だ。

キッチンを抜けると、昨日俺がいた場所に入った。真ん中の壁際に暖炉があり、暖炉の前にソファーがある。丸っこいソファー。昨日俺が座っていたものだ。小さいものだが、無理すれば大人二人入れる感じだ。
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