My fair Lady～マイフェアレディ～
彼に抱き上げられると、なんだか変な匂いがした。

「パパン…なんか変な匂いする…」

彼からする匂いはいつもの無臭ではなかった。
鉄と油と…他の何かの匂い。

なんだか気持ち悪い。俺が顔を顰めていると、彼は数秒沈黙した後に表情を見せずに答えた。

「……扉の、滑りが悪くてな。直してたんだ。そのオイルやらの匂いだろ…」

「ふ～ん」

もっともらしい答えだったのでそれ以上は追求しなかった。


彼とのお風呂。
毎日入ってるから、そう緊張はしないんだけれど。
なんだか今日はいつもと違うので変な感じだ。


俺は会話をしようと思って彼に話しかける。
彼は俺の頭を洗おうとしていた。未だに洗ってもらってるのは触れないでもらいたい事の一つだ。

「ねーパパン」

「なんだ」

シャカシャカと指の腹で丁寧に洗われる。目に入らない様に泡を上へ行くように手で回されて水を付けすぎないで泡に弾力を持たせる。

シャンプーハットというものが無いのでこういう細かい気遣いか必要なのだ。

「今日ね、久しぶりにランに乗ったの」

「…そうか、よかったな」

出すぎた泡を絞ってタイルに捨てる。そしてまた髪を洗い出す。

「うん。だからねぇ。明日も行っていい？」

「……流すぞ」

バシャーとシャワーで泡を落とす。俺は手で顔についた水を落として、彼はまたシャンプーをつけて俺の髪を洗い出す。
< 260 / 509 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop