My fair Lady~マイフェアレディ~

「で、聞きたい事ってのは?」

おじさんはずずっとお茶を啜りながら訊ねて来た。俺はじっと茶菓子に出された和菓子を見た後、おじさんの顔を見て「先に俺に聞きたかった事を」と質問を返した。

「ああ、それはね。あんまり事件の事思い出すの嫌だろうけど、いくつか聞きたいんだ。男は何か呟いていなかったかい?」

俺は記憶を探る。があまり覚えていない。何しろあの時は必死だったのだ。

「特に…あんまり覚えてないんですけど…」

「ん~例えば…歌みたいな…」

「?…さぁ。それはなかったと思いますけど」

おじさんは腕を組んでどこか難しそうな顔をしていた。

「うん、じゃあ…噛みつかれたりしなかった?」

「噛み付く?…舐められたりは…しましたけど…」

「どこを?」

「ふ、ふともも……」

なんとも言いづらい事だと俺は思う。噛み付かれたほうがマシかも。でも、本当にそうなったらきっと泣いてる。

「そうか…」

おじさんは今度は胸ポケットに入っていたメモ帳にサラサラと何か記入をしてそれを再びしまった。

「他に何か気付いた事ある?」

「いえ…」

「そうか…。じゃあ、今度は君の話を聞こうか」

俺はやっと本題に入ってドキドキと胸を高鳴らせながら、口を開いた。
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