My fair Lady~マイフェアレディ~
「本当はバラバラ殺人では微妙に違うんだよ」
「え?」
俺が驚くのも無理ないだろう。まさかそんな原点から覆されるとは思ってもみなかった。
「どういう事ですか」
おじさんはどっこいしょと座りなおすとまた話始めた。
「無くなっているんだ」
「何が?」
「パーツが」
俺は眉間に皺を寄せて小首を傾げた。おじさんは苦虫を潰したような顔をして言葉を続けた。
「身柄の一部分が消えているんだ」
「どこ…がですか…?」
唇が勝手震えてくる。それでも俺は膝の上で拳を握り必死で耐えていた。
「バラバラさ。頬肉だったり足の肉だったり脳ミソだったり…死体によりけりだ。」
「……」
何のためにそんな事を…俺が俯いて悩んでいると、おじさんは少し話題を変えてきた。
「それと、さっきも聞いたが。歌が」
「歌?」
「ああ、目撃者の情報があってね。『黒い死神と歌』なんだ。」
黒い死神は知っていたけど歌は初耳だった。しかし、何でまた歌なんか…?
「……う…た…?」
俺はまた思考が停止していた。おじさんは心配そうに「大丈夫か?」と訊ねてくる。
(最近こんなんばっか…)
俺は重たい頭を片手で支えてそれを上に煽って身体を持ち上げると「大丈夫です」と答えた。
「他には何かありますか?」
「悪いね。僕もそんなに上の立場じゃないんだ。」
おじさんは申し訳なさそうに苦笑した。おれは「いえ、凄く助かりました」と頭を下げた。
それからお茶とお菓子を頂いて。一息ついたところで俺は警察を出ていった。