My fair Lady~マイフェアレディ~
家の中に入るとまず、風呂に入る。
随分と汗をかいたから。そのまま食事にはちょっと嫌だった。
それに俺は随分と緊張と涙を堪えていたので、風呂でそれを全て流してしまった。
彼は鼻歌を歌いながら俺の髪を洗っていた。


そして静かな食事も済んで俺はふう、とソファーに座った。
キッチンの方では彼が後片付けをしていた。
俺は今日までの事をまとめる事にした。


まず。犯人は人を殺した後、身柄の一部を何故か奪っていった。
歌は恐らくあの歌だろう。
何か食べさせていた…これも謎だ。
考えたくないが一番初めの被害者は俺の本当のパパンだろう。
でもやっぱり動機がわからない。前に彼は大切なものを奪われたと言っていた。
だから。一人はわかる。でも他の人は?

…いや、待てよ…そういえば…俺が森であったおじさん。あの人も被害者なんだよな…あの人俺の父親を知っていた…。本当は繋がりが……!!


「ユウ」


呼ばれて振り向くと彼が扉の前で立っていて。俺の方へ歩み寄ってきていた。

「…なぁに?」

少し遅れて返事をすると彼は俺を後ろから抱きしめるような形で座った。
つまり俺は彼の足の間に入りスッポリと彼の腕の中に入ってしまっている状態だ。

「聞きたい事があるんだが」

俺は彼の二の腕辺りを掴んでいた。これ以上力を込められて抱き締められたくなかったからだ。彼は俺の耳元に唇を寄せて。息が吹きかかる程の距離で囁いた。


「お前、今日どこにいた?」

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