My fair Lady~マイフェアレディ~
俺はガタガタ揺れる中で目を覚ました。
それは車の中だという事がわかり、ほんの少し起き上がった。
彼が無言で運転をしている。
とても静かな空間。俺は何をする事も出来ずに、大人しく横になっていた。


車が家につく。

俺は恐怖で身体が動かない。彼は車をそのまま裏に回すと車を降りて、後ろの席のドアを開けて、俺の手を掴むと強い力で引きずり出した。

「……ッ」

俺は痛みに顔を顰めた。本当に腰が抜けてしまい。彼の持つ手一本でぶら下がっている状態で。酷く痛かったのだ。

彼はそんな俺に呆れもせずに機械的な動作で俺を担ぎ、家へと入った。


震えが止まらない。今まで一度も手を上げられた事も怒鳴られた事もない。
だからこそ、起こり来ることに身構えようがなかったのだ。

彼はキッチンを抜けて、地下に降りて行った。

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