My fair Lady~マイフェアレディ~
俺が黙っているのをいい事に彼はクルクルと乗馬鞭を弄びながら言う。

「さて、ユウ。お前は何故街に行った…?」

「……」

俺が答えないでいるとバシン!と音が響いた。続いて焼けるような痛みが二の腕に響く。服が裂けて腕が一瞬で真っ赤に晴れ上がっていた。

「ほら、答えなさい。」

言いながら三回叩かれた。「ひっ!」と短い悲鳴を上げて彼を見る。彼は答えない限り叩くのやめようとしない。バシン!という音とほぼ同時に来る痛みに言葉など出せるわけがない。
痛みに縛られて動けないがせめての抵抗に腰が少し浮いて椅子がカタカタと音を立てた。俺は必死に言葉を吐こうとする。

「…と、とも、だちに…あいたく…て」

ジンジンと痛む肌に顔を歪めながら俺は懸命に答えた。
しかし、歪んだのは彼の方。


「嘘付く子供には…お仕置きを」

言っている言葉とは裏腹にニヤリと笑みを浮かべている。


彼は俺の縄を解くと、上に吊るしてある鎖をガラガラと引っ張って降ろし。それに両腕を結びつけ、再び上に戻した。

まるで敵に捕まった人質のような状態で吊るされる。

「ぐ、ぁああっ…!!」

しかし、話の中でしか知らないこの状況…実際に自分がなってみればこんなに痛いなんて思わなかった。腕に全体重をかける事によって身柄が二つに千切れるんじゃないかと思う程の重量を感じる。
腕はギシギシと嫌な音を立てて鎖が肌に食い込み、赤く染め上げていた。

このまま意識を手放してしまいたくなる。


だが、それは彼によって許されない事だ。
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