My fair Lady~マイフェアレディ~
俺は見た瞬間ガタガタと身柄を暴れさせた。折りたたみ式のように脆いこの鉄のベッドはほんの僅かな揺れでも大きな音を放つが、決して崩れる事はない。

「ホラ、暴れるんじゃない。手元が狂うだろうが」

「いや…やめて…お願い…やめてぇ…」

彼はまず、俺の太ももを撫でた。愛おしそうに。だが直ぐに顔を顰めた。

「印の前にここだよな」

「え……?」

言っている事がわからず聞き返すと彼は忌々しそうな顔をした。

「たく、どこの馬の骨だか知らないが…俺のモンに先に手を出すとはな…」

グサッ!という音。


「ひっぎゃああああああああ!!!!!」

前触れも無く刺された太ももに俺は絶叫した。
さらにグリンと刺したナイフをドアノブを捻るように中で回される。

「ふぎゃああああああ!!」
叫んだ後にグフッと俺は泡を吐きだす。
彼はまた同じようにザッとナイフを引き抜いた。ビクン!ビクン!俺の足が痙攣しだす。

ナイフを追うように血が噴出しドパドパと床を鮮やかな赤に染めた。


彼はそのナイフについた血を美味しそうに舐める。

「……美味い…」

うっとりと味を堪能した彼は俺の刺した太ももにも唇を寄せる。
じゅる…くちゃ…ずっ、ずっという水音が俺の耳を犯す。聞きたくないのに耳を塞ぐ事さえできない。

「う…ぁ…」

彼は俺の血を吸い上げるようにして舐めしゃぶり飲み込んでいった。


もう、意識が保てない…。


俺は傷みと朦朧とする意識の中
彼が嬉しそうに腕を振り上げている姿と。
腹に来る激痛を一瞬感じて。



暗闇の中に飲み込まれていった。



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