My fair Lady~マイフェアレディ~
朝ゆっくり覚醒した。
目を開けると消毒液の匂いがムワッと来て顔を僅かに顰めた。
「……っ」
声を出そう息を吸う。しかし、掠れた空気の音しか出なかった。
身体が動かない。脳が働かない。
目だけ開いていて。天井をジッと見ているだけだ。
身柄の感覚がない。本当に自分の身柄が繋がっているのか疑いたくなる。
シーツの匂い。
身柄はどこかさっぱりしている。
俺はなんとか動こうとして右手を動かした。関節と皮膚がビリビリと痛む。それでも俺はその腕を自分の顔に寄せた。
手は、第二関節から肘の当たりまでグルグルに包帯が巻かれていた。鼻に薬の匂いがツンと刺激する。
ホロリ、と熱い雫が目尻を伝って枕を濡らした。
子供で、いればよかった。
知らなければよかった。