My fair Lady~マイフェアレディ~
にんまりと笑う彼が俺をそっと抱き起こす。

「どうしたんだ?泣いたりして」


俺は彼に縋らない。許しを請わない。


「一人で寂しかったか」


やめて。


「身柄が痛いか?」


やめてよ。


「もう、いいんだよ?」


ふわりと彼が俺を抱き締める。
優しく俺に話しかける。髪を撫で、瞼にキスを落として。頬を撫でて、おでこ同士をくっつける。



やめて。


お願い。


もう、信じさせないで…!!




俺の心が悲鳴を上げていた。

捨てたんだよ。捨てたいんだよ。貴方を愛する心はもうないの…っ!!どこかへ消えてしまったんだ!!

信じてなんかない。

昨日のあれが本当の彼の姿。

愛せない。

愛してはいけない。


だって。



また、裏切られたら。




俺はきっと壊れてしまう。



< 308 / 509 >

この作品をシェア

pagetop