My fair Lady~マイフェアレディ~
「何これっ!……何これぇえ!!?」

涙を流して、唾液がまだ顎についたまま俺は彼を睨みつけた。

ポトン、とベッドに何かが落ちてリバウンドした。何かと思って見ればそれは眼球で。

「ひいい!!」

俺がそれに驚いて後ろに下がるとその反動で眼球がコロリとベッドを転がる。ねっとりした粘膜が眼球とシーツの間に蜘蛛糸のように繋がっていた。

俺は転げるようにベッドを抜け出す。

「うう……うう……」

涙しか出てこない。とにかく、とにかく逃げ出したかった。
だが、すぐに彼に捕まる。

「やだぁ!離してぇえ!!」

ジタバタと暴れる。もう、あんな思いはしたくない!!

「コラ、暴れるんじゃない!」

彼はするすると俺の服を脱がせていく。

「やだ……やだぁっ……」

とうとう泣きはじめた俺に彼は何を言うわけでもなくタオルを取り出し、水差しの水をタオルに染み込ませると俺の身体を丁寧に拭いていった。

「うう……っ」

水の冷たさに身体がブルリと冷えた。たっぷり水を含んだタオルで拭かれた後に、違うタオルで湿った身体を拭いていく。

「ん、綺麗になったな」

ニコッと彼が笑う。


この状況で笑われても何の安心感も無い。

寧ろ恐怖を煽らせる。


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