My fair Lady~マイフェアレディ~
彼はスタスタと目の前のおもちゃ売り場を通り過ぎて、子供服の並ぶ所へ行った。

おばさん達によってもみくちゃになっている所には足は向かない。床に貼ってあったはずのセールのチラシが落ちている。

彼は安物には手を出す気はないらしく、少しガラッとしている少々値の張る服を見ていた。

しかし、そんな色男を若い女性から中年の女性までほうっておくわけがなかった。
俺はその視線になんだか居心地が悪くなったけれど、彼は何も気にしない。


「この色もいいかもな」なんて服をみている。


そこへ、我先にとポニーテールを揺らして息荒く若い店員さんが声をかけてきた。


「お客様っ!何かお探しですが?」


ニコニコとした笑みをズイッと彼に向ける。彼に抱かれている俺は当然彼の顔の近くに自分の顔があるわけで、

(こ、こわ~~いっ!!)

その女性の迫力に既に涙目だ。
だが、彼はそれをやんわりと受け流す。慣れているのだろうか?

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