My fair Lady~マイフェアレディ~

四日ですっかり冷めた俺の頭。

ユウも、大分熱は引いたはずだ。

俺はいつものようにゆっくり、地下の扉を開いた。
小さな息遣いが聞こえて、俺はそっとカーテンを開いた。


ユウがボーっとその虚ろな目を俺に向けていた。



『この人は誰だったけ…』



そんな、顔をしていた。


まるで、記憶がない……いや心を壊されたように見えて。酷く胸が痛かった。




俺は笑った。自分の都合のよさに。

何て己は自分勝手な人間なんだろうか。
相手の心と体をこれだけ傷つけておいて、まるで自分が被害者のように胸を痛める。

なんて愚かしいのだろうか。
俺は自分を嘲笑った。


出来るだけ、優しい言葉を投げ掛ける。
けれど、ユウはやはり笑ってはくれない。


当たり前だと、わかっていても。どうしても、俺はユウの笑顔が見たかった。


ふわりとユウを抱き締める。

優しく話しかける。髪を撫で、瞼にキスを落として。頬を撫でて、おでこ同士をくっつける。



痛い


そう、ユウが言っている。


ああ、わかってる。

痛かったな。


そうだな。


そうだよな。



俺も痛いんだ。



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