My fair Lady~マイフェアレディ~

「チッ!!」

俺は舌打ちをして壁を殴った。

失敗した。あの男の情報を中途半端に聞いてしまったせいで、最後の一人がどうしても見つからない。

「畜生!畜生!……チクショウッ!!」

ガン!ガン!と堅い壁を素手で殴る。擦れた傷から血が滲む。
毎日の様に情報を探す。手がかりが少なすぎる。



俺はヨロついたまま。家に戻る。


ふらふらと壁に身柄をぶつけながら。

地下に降りた。


ユウが寝息を立てて眠っている。
毎日、毎日。こうして、ユウの寝顔眺めていた。

激しい感情も嘘のように溶けていく。


ユウ、ユウ、ユウ、ユウ、ユウ……。


心で、名前を呼ぶ。


いい子だな。ごめんな。愛してるよ。


口に出してはならない言葉。心で言うだけならレオンは許してくれるだろうか……。



すると、ユウの瞼に水滴が溢れ出し、それは端に溜まって一筋、流れた。

俺は驚いて、口を開けたまま固まってしまった。

そして、ユウの唇が動き、言葉を作る。


『一人に、しないで……』


「ユ、……」

名前を呼ぼうとして思い留まった。

けれど、ユウの口が言葉を発さずに見慣れた動きをした


“パパン”


浮上した心。だがすぐに冷めていく。

その言葉の対象は果たして『俺』なのだろうか……。
自分は自惚れてはいないだろうか……。


そもそも、こいつを一人にしたのは……俺自身だ。

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