My fair Lady~マイフェアレディ~
「ああ、これじゃ嫌なのか……」
俺はネズミのぬいぐるみを引き裂いた。
「ユウ、ごめん。ちゃんと用意するから、出ておいで。ユウ」
家の中を何ども探し回る。クマのぬいぐるみを抱き締めた。
頬を摺り寄せたら。その部分が何故か濡れてしまった。
おかしいなと思って顔を離したら、パタパタと水滴が落ちてきた。
透明な水。
ユウ、ユウどこに行ったんだ。
俺は膝をついて、クマのぬいぐるみをあやした。
「そうそう、昔はこんなに小さくて……」
パタパタ、パタパタ……。
「やわらかくて。温かくて……いつも笑って……」
パタパタ、パタパタ……。
嫌だな、大切なぬいぐるみに水の染みが出来ていく。
俺は銃とぬいぐるみを持って立ち上がった。
「ユウ……どこに行ってしまったんだ……」
広い草原。真ん丸の月が俺を照らす。
クマと銃を抱いて、愛しい子を探しに行く……。